小回りがきく製品群
同社の主力製品は、ホモジナイザーと発光分析装置である。競合の多い製品ではあるが、同社は研究者のニーズに合わせた小回りの良さで独自性を出してきた。
例えばホモジナイザーは、比較的柔らかい動物組織を破砕する場合もあれば、細胞壁を持ち比較的硬い植物組織や種子を破砕するなど、その用途は多岐にわたる。また、細胞を破砕できればよいわけではなく、目的とする組織や物質の破壊や失活を起こさずにサンプルを調製できることも必要だ。細胞からゲノムDNAを得るのであれば、そのせん断をなるべく少なく抑えることが望まれるし、RNAであれば分解のリスクを下げるために極力短時間で細胞を破砕することが望まれるだろう。また、細胞内の酵素を得る場合には回転によって生じる熱や物理的衝撃で失活しない細胞破砕の方法が要求される。研究の目的に応じて、研究者の要求は多種多様だ。こうした様々な要求に対し、同社はオーダーメイドで機器を製作してきた。そして汎用性の 高いものだけがカタログに掲載され、販売される。同社の製品は研究者の要求に応えてきたアイデアと技術力の結晶とも言える。
今や、同社のホモジナイザーの利用分野は基礎研究の分野に留まらない。その一例が医療分野だ。がん手術では、切除部位を決めるためにリンパ節への転移を確認する必要がある。その際、組織からRNAを抽出して診断を行うが、転移が進行しているリンパ節は堅くなるために破砕が難しく、検査に時間と手間がかかってしまっていた。この操作を手早く行える同社のホモジナイザー「ヒスコトロン」は、医療現場で評価されて臨床での利用が進んでいる。
カスタムメイドマイスター
「ニーズにどう応じるかを考えながらものづくりをするのが一番楽しい」と語る職人肌の本田氏がルミノメーターの開発を始めたのは、機械的な面白さを感じたからだ。大学時代に研究したレーザー関連のバックグランドを買われて入社した海外理化学機器の輸入代理店で、光源を用いない光度計の存在を知る。それが、ルミノメーターだった。「機械で光を測定する時は光源を用いるのが一般的だったわけですが、それを使わずに発光を計測できるという仕組みが非常に面白いと感じました。それで、自分たちで作ってみようということになりました」。生物発光装置が出回り始めて間もない、35年近く前のことである。これまでに数々のニーズベースの仕様変更を行い、「そのお客様にしか売れなかったものも多く存在します」と笑いながら機器のことを振り返る。そんな研究開発の一端を同社のホームページで伺い知ることができる。試薬を自動で反応系に加えるシステム、反応セルの温度制御機能といった機能に加え、N2やCO2などの各種ガスをパージングした測定、沈降性の高いサンプルに対応した撹拌機能、ストップドフローセル、φ7~ 35㎜までの測定容器への対応、セル内に試薬や緩衝液を循環させる機能、発光反応が早いサンプルを使ったフローインジェクションやHPLCに対応したスパイラルフロー機能など、同社のルミノメーターにはオリジナリティーの高さが際だつ。
研究者とともに成長する
「これからはより多くの研究者と交流しながら、我々の製品を使ってもらう中で色々なフィードバックをいただくことで私たちも成長し、よりよい製品を皆様に使っていただけるようにしていきたいですね」と同社専務本田雅秀氏は語る。現在力を入れるゼータ電位測定装置はその試金石だ。ゼータ電位とは、溶液にコロイド粒子などの別の相が接した時に、両者の間に生じる電位差を指す。元々は会社を設立して間もない20年ほど前に、工学系研究者とのやり取りから生まれた製品だ。工学系の研究者を対象として売り始めた同製品だが、生命科学分野のアプリケーションも開発され始めている。例えばマラリアに感染した人の赤血球では、非感染者と比べた時にゼータ電位が変化することが知られている。今年に入り、そのゼータ電位を測定するために同社の測定装置「ZEECOM」を使用した学術論文※1が、NIHの研究者から発表された。(参照)
「ZEECOMに関しても使用方法はもちろんのこと、我々が思いつかないアプリケーションを研究者と一緒に開拓していければと考えています」と口を揃える周、雅秀の両氏。研究者とともに成長する。その意識があったからこそ、研究者のアイデアと同社の高い技術力が化学反応を起こし、新しいデータとニッチな市場を生んできたに違いない。これからも同社は研究者の声を形にしていくだろう。

現在でも研究開発の現場に立つ代表取締役の本田周(ほんだ めぐる)氏と若手研究者とともに会社もさらに成長していければと語る専務取締役の本田雅秀(ほんだ まさひで)氏。


























