マイクロアレイの装置、チップなどの消耗品、あるいは受託解析サービスなど、今や様々なマイクロアレイに関わる製品・サービスが流通している。3D-Gene®を取り扱う東レ株式会社は、国内で唯一、1社で装置やチップの開発・製造・販売から受託サービスまでを行う。全てに関わっているからこそできるサービスが同社にはある。同社でデータ解析を担当する近藤哲司氏の話にお話を伺うことができた。
マイクロアレイの場合、実験間での誤差を少なくし、信頼性の高いデータを得るにはDNAチップの品質や実験手技が重要であるが、意義があるデータを得るためには実験計画の段階からプロトコルを丁寧に組み立てていく必要がある。マイクロアレイを初めて利用するユーザーにとっては、プロトコルの計画から相談できる相手が存在することは大きな助けとなるはずだ。「弊社 では、大きく3つの段階でお客様とディスカッションをするようにしています。まず実験前の最適な実験系について、次にお客様から送付されるサンプルの調整方法や実験方法について、そして実験後のデータ解析の流れについてです。安心してご利用頂くために、最初から最後まで1人の担当者をつけてサポートを実施しています」。この近藤氏の言葉にあるように、東レの受託解析サービスはディスカッションベースで進められている。しかも、装置の開発から自社で行っているために、3D-Gene®の特性を十分に理解した上での提案が可能だ。ユーザーの実験計画の全体の流れと製品の知識の両方を把握する専任の担当者からのサポートが、スムーズで精度の高い実験結果を手に入れるために大きく寄与する。
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| 図1 3D-GeneR の受託解析サービスのフロー 赤矢印はやり取りを表す。実験前とデータ解析時にディスカッションを繰り返す点がサービスの1つのポイントになっている。 |
「RNAサンプル以外にも組織検体からのRNAサンプル調整段階からの受託にも対応しています。特に血漿・血清検体やFFPE (ホルマリン固定パラフィン包埋)検体からRNA抽出し、miRNAの解析も実施しています」と、組織検体からのでの解析に近藤氏は自信を見せる。疾患の研究においては、FFPE 検体は臨床と予後の組織情報を得るための貴重なサンプルとして価値を持つ。しかし、サンプル量や品質に限りがあるため、確実かつ高品質な状態で解析用のRNAを抽出してくる必要がある。こうした場面で東レの熟練したスタッフによるサービスが効果を発揮してくれるのだ。血漿・血液サンプルの場合は、サンプルをそのまま送れば抽出から実施してくれる。この点もユーザーにとっては助かる点だと言えるだろう。
血漿・血清中のmiRNA解析では、3D-Gene®のmiRNA用チップmiRNA Oligo chipを、FFPE 検体ではヒト全遺伝子、消化器がん関連遺伝子、免疫学・メタボリックシンドローム関連遺伝子、マウス全遺伝子、ラット全遺伝子、さらにmiRNA Oligo chipのうちから、目的にあったチップを選択して解析を進める体制が整っている。
「サンプルの準備に関する指示や、各実験ステップでの情報の還元、生データの解析(trimming)についてはしっかりやっていただきました。きれいな生データを返すという基本的な部分はしっかりできていたと思います」と、リバネス研究費東レ賞の受賞者で実際にサービスをご利用頂いた名古屋市立大学の北村浩氏もデータの質に対してコメントをよせている。
「mRNAの配列ですとEnsembl あるいはRefseqというデータベースを基準としています。また、miRNAの配列についてはmiRbaseを基準としています。ただし、解析につきましてはこれらのデータベース以外にもお客様の要望に応じて様々な種類のデータベースを使用しています」と近藤氏は答える。使用している代表的なデータベースを表に掲載した。こうしたデータベースを駆使しながら、またユーザーとのディスカッションを行いながら、得られた生データの解析に取組んでいる。
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| 表1 3D-GeneR 受託解析サービスで利用している代表的なデータベース |
また、実験に対するスタッフの姿勢についても評価をいただくこともあるそうだ。例えば、以前にユーザーの実験系を予想して多めにデータを用意したことがあったという。その時は相手の実験の意図からは外れていたので、その分のデータは不要になってしまったが、そうした姿勢を評価し、以後もリピートで使い続けていただいているだけでなく、他の研究者にもサービスを紹介いただいているというエピソードもあるそうだ。
3D-Gene®を使った研究でOncologyやPNAS上に論文を発表する研究者も現れ始めている※1。こうした研究者とのディスカッションはさらに同社の受託解析の質を向上させることにつながっていくだろう。しっかりとした生データを出しながら、時にウェットな対応もみせるスタッフらが提供する3D-Gene®のサービスの今後進展が期待される。